30代に入ると、今までとは違う趣味趣向が生まれる。「そう?」という声が聞こえてきそうだけど、ボクの場合はたくさんあった。
食べ物や音楽の好みが大きく変わった。急にビールが飲めるようになった。映画も今までは見なかったようなジャンルのものも楽しめるようになったし。
若い頃は、もっと物事を選り好みしていた記憶がある。今はずいぶんとなんでも満遍なく受け入れられるようになった。そういうのをカッコ悪い変化だという見かたもあると思うけど、自分としては、この年になっても、さらに楽しみが増えることに喜びを感じている。
最近、ハマっているのが格闘技。見るほうではなく、やるほうで。若い時分のほうが、興味が湧きそうなものなのに、今この年齢になるまでぜんぜん関心がなかった。
今年の二月に日本で空手を習い始めた。そのあと韓国でキックボクシングのジムへ通い、今はマレーシアのペナン島で総合格闘技のジムへ通ってる。
日本には空手、タイにはムエタイ、韓国だったらテコンドーというように、アジアの国々には、その国をルーツにする格闘技がある。だからか、どの国でも住む場所の近くに、わりと簡単に格闘技のジムを見つけられる。住む場所が変わっても、格闘技は続けやすい習い事だ。
ペナンでも、偶然近所にこんな立派なジムを見つけた。速攻で入門した。
ジムの中はこんな感じ。
練習前にマットの上でストレッチをする。それだけで、汗がじんわり湧き出て、日頃のデスクワークで凝りに凝った身体がほぐれ、ゆがんだ骨格が元どおりになっていく気がする。
ストレッチが済めば、マットの上を走ったり、スキップしたり、軽いウォーミングアップから練習が始まる。じゅうぶんに体が温まったあと、サンドバッグを相手にパンチとキックの練習へと移る。
サンドバッグを下手なやり方で殴ると(蹴ると)手首や足首を痛めるので、意識して正確にジャストミートを狙う。ストレス発散になるのはもちろん、集中力もつくんだと思う。ジムへ行った日は、仕事のはかどり具合が違うから。
サンドバッグが終わると、ペアになって攻撃と防御の練習をする。これがすごく楽しい。
フリーランスなので、出勤はなく、同僚もいない。一日中まったく他人と会話をしない日も珍しくないので、こうして相手とぶつかりあってできるトレーニングが嬉しい。
こんな金網が張られたリングの中で、スパーリングもする。
まだ、格闘技歴6ヶ月の初心者のボクは、いつもボコられる。表に出さないようにしてるけど、実はかなり悔しい。
運動は今までも常に心がけてた。朝走ったり、フィットネスジムで筋トレとか。でも、孤独に自分と向き合うあの感じが苦手で、音楽を聴きながらやってても、常に心の中では「しんどいなー、やめたいなー」みたいな。途中で退屈になってくる。
いまも筋トレの時間がある。めちゃくちゃ器具が揃ってる。
一人じゃなくてチームでやる筋トレ。メンバー同士、互いを煽りながらやるので、自分だけ抜けるわけにはいかない。必死についていってる。
格闘技と聞くと恐ろしいイメージを抱く人も多いかもしれない。でも、じっさいジムのメンバーは感じの良い人ばかり。女子もいて、みんな自分の体力とスキルに合わせてトレーニングを楽しんでる。
ここペナンは多民族国家なので、色々な人種の人たちと一緒にトレーニングできるのも良い。インド系、中国系のマレーシア人たちに混じって、日本人のボクがいる。
フィリピン人、カナダ人、マレーシア人と、コーチ陣も国際色が豊か。格闘技ジムは国境を越えて横のつながりが強いみたいで、どのコーチも色々な国を巡り、その地のジムで教えているらしい。
他の道場から出稽古にくる練習生もいて、面白い出会いの場所にもなってる。ボクもすでに三ヶ国目の道場。各道場では、オリジナルの道着やトレーニングウェアを売ってる。集めるのも面白いと思う。
「強くなりたい」が動機で始めたわけではないし、ケンカしたいとかもぜんぜん思わない。もし路上で人に絡まれたりすれば、何より謝って逃げるのが一番の得策だというふうに考えてる。でも、厳しいトレーニングのおかげで、精神的にもちょっとタフになった気がしていて、前より少し引き締まった身体を鏡に映していい気分になってる。
20代の頃は食べても全然太らなかった。それが30を過ぎると、食べたぶんだけ脂肪が付く体質に変わった。気持ちのほうも老化してきたのか、怖じ気づきやすくなった。バックパックひとつを背負って旅している昔の写真なんかを見ると、いまの心身両方の衰えに気づく。
格闘技は、そんな体と心の老化のスピードをおさえ、気づかないうちになくしてた自信を取り戻させてくれる。だから30代に入ったオッサンたちにこそおすすめしたい。
次は台湾になる予定。ジムはもう見つけてある。これがそこのPV。なかなかカッコイイ。
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